大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋地方裁判所 昭和53年(行ウ)27号 判決 1987年2月02日

名古屋市中川区柳川町二番一四号

原告

高野製材株式会社

右代表者代表取締役

高野照義

右訴訟代理人弁護士

宮田陸奥男

水野幹男

冨田武生

鈴木泉

浅井淳郎

岩月浩二

名古屋市中川区西古渡町六丁目八番地

被告

中川税務署長

安田政義

右指定代理人

宮澤俊夫

遠藤孝仁

山田太郎

辻中修

主文

原告の請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、昭和五一年五月三一日付けでした原告の昭和四七年四月一日から昭和四八年三月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち所得金額金四九三万〇六一四円を超える部分(ただし、審査裁決により一部取り消された後のもの)、昭和五一年六月一九日付けでした原告の昭和四八年四月一日から昭和四九年三月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、所得金額金一〇三二万一七〇〇円を超える部分(前同)及び同日付けでした原告の昭和四九年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度の法人税の更正のうち、所得金額金四六万七〇二五円を超える部分をいずれも取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨の判決を求める。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告の昭和四七年四月一日から昭和四八年三月三一日までの事業年度、同年四月一日から昭和四九年三月三一日までの事業年度及び同年四月一日から昭和五〇年三月三一日までの事業年度(以下、それぞれ「第一係争年度」、「第二係争年度」及び「第三係争年度」といい、これらを「本件各係争年度」と総称する。)について、原告のなした確定申告、修正申告、異議申立及び審査請求、被告のなした更正及び異議決定並びに国税不服審判所長のなした審査裁決の経緯は、別表一ないし三記載のとおりである。

2  しかしながら、被告の前記各更正(ただし、第一、二係争年度分については審査裁決により一部取り消された後のもの。以下「本件課税処分」と総称する。)は、原告の所得金額を過大に認定した違法があるので、原告の確定申告(ただし、第一、二係争年度分については修正申告)にかかる所得金額を超える部分につき、その取消を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1項の事実は認める。

2  同2項は争う。

三  被告の主張

1  原告の申告にかかる所得金額は、第一係争年度分につき金四九三万〇六一四円、第二係争年度分につき金一〇三二万一七〇〇円第三係争年度分につき金四六万七〇二五円である。

2  右申告にかかる所得金額に加算すべきものは以下のとおりであり、その合計額は、第一係争年度分が金七六二万九八五六円、第二係争年度分が金八三〇万三五三七円、第三係争年度分が金五〇七万五三一七円となる。

(一) 貸倒損失の損金不算入

第一係争年度分につき金一七九万八八九七円。

(二) 仕入れの架空計上

原告が決算書に計上した仕入金額のうち、別表四の「架空計上」欄に掲げる金額は、原告が仕入代金として各仕入先に支払ったものではなく、原告に帰属する名古屋相互銀行川原通支店の「太田勝次」名義の普通預金及び大和銀行中村支店の「桂川秋次」名義の普通預金に入金していたものと、原告の取引銀行である名古屋相互銀行八熊支店の店頭で原告が現金を受領しているものであって、いずれも原告が取得しているから右金額は仕入れとはならない。

また、別表四の「仕入計上もれ」欄に掲げる金額は、原告の決算書に計上もれとなっていた仕入金額であり、差引仕入れの架空計上金額は、別表四のとおり、第一係争年度分が金五七〇万四六〇三円、第二係争年度分が金三九六万〇五〇三円、第三係争年度分が金二三七万七二七五円となる。

(三) 雑収入の計上もれ(その一、無記名定期預金)

(1) 原告は、名古屋相互銀行柳橋中央市場支店に、金三一八万〇五九五円、金三〇万円、金八〇万円の三口の無記名定期預金(以下、それぞれ「A預金」、「B預金」、「C預金」という。)を有していたところ、第一係争年度である昭和四七年六月一七日ないし同年七月一三日にこれらを解約し、同預金の利息として金五万三二〇六円、金五〇四八円、金二万三七七二円、以上合計金八万二〇二六円を受取っているにもかかわらず、これを雑収入として計上していない。

右預金が原告に帰属するものであることは、次の事実から明らかである。

すなわち、右無記名定期預金の発生及びその後の経緯は別表五記載のとおりであるところ、A預金の源となった名古屋相互銀行八熊支店昭和四四年八月五日設定無記名定期預金(No.〇三〇七三)三〇〇万円については、預金日の前事業年度である昭和四三年四月一日から昭和四四年三月三一日までの間に、「梅村建蔵」なる架空名義を使用して架空仕入れ(金二六八万二六九九円)を計上することにより蓄積した簿外の資金をもって充当したものであり、B預金、及びC預金の源となった名古屋相互銀行柳橋中央市場支店昭和四五年一二月二二日設定無記名定期預金(No.一〇二二一)五〇万円も、昭和四五、四六年度中になされた架空仕入れにより蓄積した簿外の資金が充当されたものである。

(2) 原告は、名古屋相互銀行瓦町支店に、A、B預金などが合流して設定された金四〇〇万円の、C預金が源となって設定された金一〇〇万円の各無記名定期預金を有していたところ、第二係争年度である昭和四八年七月一六日、これらを解約して同預金の利息金一九万二七二六円、金四万四八八一円、以上合計金二三万七六〇七円を得たが、計上されていない。

(3) さらに原告は、前同日、右利息を預金に組入れて無記名定期預金となしているところ、第三係争年度である昭和四九年七月一六日、これらを解約し、利息として金一五万七二二七円、金三万九一八〇円、以上合計金一九万六九〇七円を得たが、計上されていない。

(四) 雑収入の計上もれ(その二、仮名普通預金)

原告は、名古屋相互銀行川原通支店、同黒川支店及び大和銀行中村支店に原告の架空名義である「太田勝次」、「山中浩司」、「桂木秋次」名義の各普通預金を有していたが、これらの預金に左記の通り各係争年分に受取利息等の収入があるにもかかわらず決算書に計上しなかったものである。

(1) 第一係争年度分

(a) 名古屋相互銀行川原通支店太田勝次名義普通預金

金一万四四七二円

(b) 名古屋相互銀行黒川支店山中浩司名義普通預金

金一万九八五九円

(c) 大和銀行中村支店桂川秋次名義普通預金

金一万円

合計金四万四三三一円

(2) 第二係争年度分

(a) 名古屋相互銀行川原通支店太田勝次名義普通預金

金二万六四二五円

(b) 名古屋相互銀行黒川支店山中浩司名義普通預金

金二万五一五三円

(c) 大和銀行中村支店桂川秋次名義普通預金

金四万三四六九円

合計金九万五〇四七円

(3) 第三係争年度分

(a) 名古屋相互銀行川原通支店太田勝次名義普通預金

金三万円

(b) 大和銀行中村支店桂川秋次名義普通預金

金一二万四〇〇九円

(c) 名古屋相互銀行黒川支店山中浩司名義普通預金

金三万二一三六円

合計金一八万六一四五円

(五) 期首たな卸資産の減額

原告が提出した第二係争年度分の申告書には、第一係争年度である昭和四八年三月三一日に、「長瀬材木店」から仕入れたと称する金六四万七一八〇円及び「ハコ善桂川製凾所」から仕入れたと称する金三三万九三三〇円、合計金九八万六五一〇円が期首たな卸資産として計上され、売上原価となっているが、右金額は架空仕入れ(別表四の第一係争年度分の67番)であるから、売上原価とならず、申告額から減額すべきものである。

(六) 売上収入の計上もれ額

第二係争年度分につき金二二万三八七〇円、第三係争年度分につき金一七万三四九〇円。

(七) 役員賞与の損金不算入額

第二係争年度分につき金八〇万円、第三係争年度分につき金九〇万円。

(八) 仕入れから減算すべき額

第三係争年度分につき金一二四万二〇〇〇円。

3  また、前記申告にかかる所得金額から減算すべきものは以下のとおりであり、その合計額は、第一係争年度分が金九八万六五一〇円、第二係争年度分が金二〇三万九一六〇円、第三係争年度分が金三〇〇万五〇七〇円となる。

(一) 期末たな卸資産の減額

原告が提出した第一係争年度分の申告書には、2項五記載の金九八万六五一〇円が期末たな卸資産として計上されているが、既述のとおり、右金額は架空仕入れであるから、申告額から減額すべきものである。

(二) 仕入れの計上もれ額

第二係争年度分につき金一二四万二〇〇〇円。

(三) 事業税の損金算入額

(1) 第二係争年度分

原告は、第一係争年度分について昭和四九年二月一四日に所得金額を金四九三万〇六一四円とする修正確定申告書を提出し、同所得金額にかかる事業税額金四五万六六〇〇円を損金として第二係争年度分の所得金額から減算したが、原告の所得金額は、後記4項のとおり金一一五七万三九六〇円であるから、同金額に地方税法(昭和四九年三月三〇日法一九号改正前のもの。)七二条の二二第一項二号「その他の法人」欄(事業税)の税率を適用すると、事業税額は金一二五万三七六〇円となる。したがって、原告が申告書に損金として計上した事業税額との差額金七九万七一六〇円を事業税の損金として第二係争年度分の所得金額より減算すべきものである。

(2) 第三係争年度分

原告は、第二係争年度分について昭和四九年八月一五日に所得金額を金一〇三二万一七〇〇円とする修正確定申告書を提出し、同所得金額にかかる事業税額金一一〇万三五二〇円を損金として第三係争年度分の所得金額から減算したが、原告の右所得金額は金一六五八万六〇七七円であるから、(1)と同様に地方税法(昭和四九年三月三〇日法第一九号改正による附則三条三項参照。)を適用すると事業税額は金一八五万五三二〇円となる。したがって、原告が申告書に損金として計上した事業税額との差額金七五万一八〇〇円を損金として第三係争年度分より減算すべきものである。

(四) 売上げから減算すべき額

第三係争年度分につき金二二二万三八七〇円。

(五) 利子税損金算入額

第三係争年度分につき金二万九四〇〇円。

4  以上、1ないし3項を総合すると、別表六記載のとおり原告の所得金額は、第一係争年度分につき金一一五七万三九六〇円、第二係争年度分につき金一六五八万六〇七七円、第三係争年度分につき、二五三万七二七二円となるので、右金額と同額ないしそれ以下の所得金額を認定した被告の本件課税処分は適法である。

四  被告の主張に対する認否

1  被告の主張1項の事実は認める。

2(一)  同2項一の事実は認める。

(二)  同2項二のうち、原告が別表四の「架空計上」欄に掲げる金額を決算書に仕入金額として計上した事実は認めるが、その余は否認する。

(三)  同2項三のうち、A、B、C各預金の発生及びその後の経過が別表五記載のとおりであることは認めるが、その余は否認する。

(四)  同2項四の事実は否認する。

(五)  同2項五のうち、原告が提出した第二係争年度分の申告書に被告主張の期首たな卸資産が計上されている事実は認めるが、その余は否認する。

(六)  同2項六の事実は認める。

(七)  同2項七の事実は認める。

(八)  同2項八の事実は認める。

3(一)  同3項一のうち、原告が提出した第一係争年度分の申告書に被告主張の期末たな卸資産が計上されている事実は認めるが、その余は否認する。

(二)  同3項二の事実は認める。

(三)  同3項三のうち、原告の申告にかかる事業税額が被告主張の金額であり、さらに金二一万五六七〇円、金一八万七九二〇円が第二係争年度分、第三係争年度分の各所得金額より、それぞれ減算すべきことは認めるが、その余は否認する。

(四)  同3項四の事実は認める。

(五)  同3項五の事実は認める。

4  同4項は争う。

五  原告の反論

1  仕入れの架空計上及び期首たな卸資産の減算について

被告の主張する仕入れの架空計上(別表四の「架空計上」欄記載の金額。)は、すべて現実の取引に基づき、仕入代金として仕入先に支払ったものである。

すなわち、訴外安田雪雄(以下、「安田」という。)は、「鈴木材木店」、「金山材木店」、「長瀬材木店」の名称を、訴外上原富太郎(以下、「上原」という。)は、「ハコ善桂川製凾所」、「上原材木店」の名称をそれぞれ使用して取引していたところ、右両名は取引に際し、現金決済を望んでいたこと、原告にとってもそれが有利であったこと、から現金決済方式を採用したが、原告の資金繰り等の都合から、原告が直接現金を支払うのではなく、もと原告の代表取締役であった訴外高野正一(以下、「正一」という。)個人の手持現金をもって立替払をなし、その見返りとして、その都度原告より「材照商店・高野正一」名義(原告の販売部門の別称)の手形(小切手)の交付を受け、その支払期日が到来するごとに、正一が、同人に帰属する名古屋相互銀行川原通支店「太田勝次」名義普通預金口座(安田との取引関係)又は大和銀行中村支店「桂川秋次」名義普通預金口座(上原との取引関係)を利用して取り立てていたものである。

2  雑収入の計上もれ(その一、二)について

被告主張の仮名普通預金が正一に帰属することは、前項で述べたとおりである。

また、正一は、亡父新三郎が生前蒐集していた刀剣類等の骨董品を相続(大正一〇年一〇月)し、そのころより刀剣類の蒐集を趣味とするようになり、また兄新一郎の死亡に伴い、同人の蒐集した相当数の骨董品を譲り受けて保有していたところ、昭和四四年七月ころ、豊橋美術こと訴外富田某に対し、左記刀剣類を約金二八〇万円で売却し、同金額の収入を得て、前記A預金の原資となしたものであり、また、「梅村建蔵」は、上原の別称であり、同人との取引は実在していたから、右無記名定期預金も正一個人に帰属するものである。

六  原告の反論に対する被告の認否及び再反論

1  原告の反論1項の事実は否認する。

原告主張の現金決済方式が原告の資金繰りのためであれば、原告は正一個人から借入れをし、その旨の記帳を行ったうえ、原告自らが直接現金で仕入先に支払えば足りることであって、正一個人がことさらに、その都度原告のためわざわざ立替払いをし、その見返りとして原告が振出した小切手及び約束手形を受取り、それをその都度別名義の前記預金口座に預け入れるという形の、煩雑な処理を行う必要性は全くなく、極めて不合理というべきである。また、手形(小切手)取立てに利用された仮名普通預金が正一個人のものであるのであれば、「太田勝次」名義のものは名古屋相互銀行川原通支店に、「桂川秋次」名義のものは大和銀行中村支店に、「山中浩司」名義のものは名古屋相互銀行黒川支店に、というように、それぞれ普通預金の名義を変えたうえ、しかも預金口座開設の支店を変え、さらに取引銀行をも変える必要性は全くないはずである。

以上に述べたとおり、原告は、架空仕入れをあたかも真実であるかのように見せるため、つまり、ある小切手ないし約束手形について、その振出し銀行と取立て銀行が相違し、かつ交換取立銀行口座がある場合においては、通常、その支払は正当になされたものであると見がちであるということ、換言すれば、不当な意図のもとになされたものであることを発見するのが困難であるということを十分知悉したうえで、ことさらに複雑な決済処理を行うことにより、架空仕入れであるにもかかわらず、これらを真正な仕入れらしく見せていたものである。

2  原告の反論2項の事実は否認する。

原告会社の代表者であった正一には、前記無記名定期預金をする資力がない。

すなわち、正一及びその家族(妻よしの、長男照義)の昭和四四年中における収入金額の合計額は別表七―一のとおり金五一二万七〇〇〇円であるところ、同年中における右正一ら名義の預金の状況は別表七―二のとおり金二〇〇万七〇〇〇円であり、またこの他に正一は、訴外丹羽雪爪に対し、昭和四四年九月三〇日に金二〇〇万円、同年一二月一日に金一〇〇万円の貸付けを行っている。

ところで、昭和四五年版「名古屋市統計年鑑」によれば、昭和四四年の名古屋市における勤労者世帯(家族数の平均三・八九人)の一ケ月の標準的な家計の消費支出額は、金八万九一九九円であり、これに基づき三人家族の一年間の支出額を算出すると、左記のとおり、一年間において金八二万五四八〇円を要することとなる。

89,199円÷3.89人=22,930円……‥一人当たりの一ケ月の金額

22,930円×3人=68,790円………‥家族三人の一ケ月の消費支出額

68,790×12ヶ月=825,480円

したがって、正一、よしの及び照義の三名の収入金額の内、無記名定期預金になり得る額は、記名預金、貸付金、消費支出額を控除した残額となるが、本件においては控除額が収入金額を金七〇万五四八〇円上回ることとなり到底金三〇〇万円の資金源にはなり得ないのである。

原告は、無記名定期預金を作成するにあたって、その届出印に三浦、山下、河合及び神谷などの仮名を使用しているが、右無記名定期預金が原告主張のごとく正一個人のものであれば、何ら仮名を使用する必要はないのにもかかわらず右仮名を使用したのは、原告の預金であることを隠ぺいするためのものにほかならないのである。

以上のとおり、A預金は原告に帰属するものといわざるを得ず、その他の預金も同様である。

第三証拠

本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  本件課税処分の経緯について

請求原因1項の事実は当事者間に争いがない。

二  原告の申告所得金額及びこれに加算すべきことにつき争いのない項目について

被告の主張1項、2項一、同項六ないし八の各事実はいずれも当事者間に争いがない。

三  仕入れの架空計上について

1  被告の主張2項二のうち、原告が別表四の「架空計上」欄に掲げる各金額を決算書に仕入金額として計上した事実は当事者間に争いがなく、これにいずれも原本の存在及び成立とも争いのない乙第一ないし第三一号証の各一、いずれも原本の存在については争いがなく、成立についても弁論の全趣旨により認められる乙第一ないし第三一号証の各二並びにいずれも弁論の全趣旨により原本の存在及び成立とも認められる乙第三二、三三号証によれば、原告は右金額に対応する約束手形又は小切手を「<高>材照商店」の名義で振り出している(ただし、現金決済の形式をとったとされる第二係争年度分の4番、第三係争年度分の5番、9番、14番の各取引は除く。)ところ、右約束手形及び小切手は、いずれも別表四の「取立名義」欄記載の名義人により取立て、決済され、そのうち、「ハコ善桂川製凾所」又は「上原材木店」を仕入先とする取引に関して振り出された約束手形(別表四の第一係争年度分の2番、6番、第二係争年度分の9ないし11番)の手形金はいずれも大和銀行中村支店の「桂川秋次」名義の普通預金口座に、「鈴木材木店」、「金山材木店」又は「長瀬材木店」を仕入先とする取引に関して振り出された約束手形(第一係争年度分の1番、3ないし5番、7番、第二係争年度分の1、2番、第三係争年度分の7、8番)の手形金は、いずれも名古屋相互銀行川原通支店の「太田勝次」名義の普通預金口座に各入金されている事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

2  ところで、原告は、「ハコ善桂川製凾所」及び「上原材木店」は上原の、「鈴木材木店」、「金山材木店」及び「長瀬材木店」は安田の、各別称であって、別表四の「架空計上」欄記載の各取引は同人らとの間でなされた実在のものであり、ただ代金の決済方法として、いったん正一が現金にて立替払した後、原告より正一が手形又は小切手の交付を受け、これを正一が前記「太田勝次」ないし「桂川秋次」名義の普通預金口座を利用して取り立てていたものである旨主張し(原告の反論1項)、これを裏付ける書証として甲第五号証の一ないし三、第六号証の一の一ないし一の四、同号証二ないし五、第七号証の一ないし四、第八号証の一ないし五、第九号証の一ないし三、第一〇号証の一の一ないし一の四、同号証の二ないし五、第一一号証の一ないし四(以上、第一係争年度分)、第一二号証の一ないし三、第一三号証の一ないし五、第一四号証の一、二、同号証の三の一、二、同号証の四、第一五号証の一ないし四、第一六号証の一ないし三、第一七号証の一、二、第一八号証の一ないし三、第一九号証の一ないし四、第二〇号証の一、同号証の二の一ないし二の三、同号証の三、四、第二一号証の一、二、第二二号証の一ないし四、第二三号証の一ないし三(以上、第二係争年度分)、第二四号証の一ないし四、第二五号証の一、二、第二六号証の一ないし四、第二七、二八号証の各一、二、第二九号証の一ないし四、第三〇ないし第三五号証の各一、二、第三六号証の一ないし三、第三七号証の一、二(以上、第三係争年度分)を提出し、その真正な成立を直接証する証拠として、甲第一、二号証、証人高野正一、同石田康司の各証言及び原告代表者尋問の結果を援用する(もっとも、右石田証人及び原告代表者は、専ら正一からの伝聞を証言、供述するものであって、直接体験に基づき、前記取引の実在を証するものではない。)。

3  しかしながら、証人上原富太郎は、別表四の「仕入計上もれ」欄に記載する仕入れを仲介ないし斡旋したことはあるものの、個人的に原告と取引したことはなく、前掲各書証のうち、「ハコ善桂川製凾所」又は「上原材木店」作成名義のものを作成したこともない、甲第二号証は、正一に依頼されて虚偽の内容を記載したにすぎず、その際に、「ハコ善」は実在しないから、その名称を使う旨正一より説明された、と証言し、成立について争いのない甲第六二号証及び証人千賀清宏の証言により真正に成立したものと認められる乙第三四号証によれば、上原は、国税不服審判所における審理の際や、本訴提起後における大蔵事務官の聴取の際にも、右証言と同旨の供述をなしている事実が認められる(以下、「上原供述」という。)。

また、安田も、前掲甲第六二号証、証人千賀清宏の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる乙第三五号証によると、右と同様の審理、聴取の際に、勤務先である「粂材木店」を離れて個人的に原告と取引をなしたことはなく、前記各書証のうち、「金山材木店」又は「長瀬材木店」作成名義の請求書、領収証などの大部分及びこれらを仕入先とする取引に関して振り出された小切手の裏書の一部(「長瀬成夫」、「長瀬成男」、「長瀬宏一」名義のもの。)は、自ら作成したものであるが、これらは、原告方を訪れた都度、正一に依頼されて、示された明細書などの基礎資料に基づいて作成された虚偽のものであり、甲第一号証も同様である旨供述している事実が認められる(以下、「安田供述」という。)。

そうすると、原告が本件「架空」仕入れの取引先として主張する上原及び安田は、右主張を全面的に否定していることが明らかであり、原告の主張に沿う前掲各証拠はにわかに採用しがたいといわざるを得ない。

4  もっとも、証人高野正一、同石田康司及び原告代表者らは、その証言又は本人尋問において、上原及び安田は、その勤務先の木材を横流しして私利を図ったものであり、右取引の存在が明るみに出ると、自らが課税対象になる恐れがあることから、虚偽の事実を述べているかの如き供述をする。

しかしながら、右各供述は確たる証拠に基づくものではないばかりか、前掲甲第二号証、証人石田康司の証言及びこれにより真正に成立したものと認められる甲第六一号証を総合すると、正一は、本件課税処分に対する審査請求の段階では、当初、上原との取引であると思っていたものは、実は上原の名義を借用した「杉山」との取引であったと判断し、その旨主張していたこと、したがって、その当時、正一は、上原が勤務先の木材を横流しして原告との取引をしたなどとは考えていなかったことが認められるのであり、右事実に照らすと、右原告代表者らの供述する、上原が虚偽の証言をしなければならなかった動機ないし必要性の存在については疑問があるものといわざるを得ない。結局、原告代表者らの右各供述は前記上原供述の信憑性を損うものではないというべきである。

また、安田については、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第七七号証によれば、前掲甲第五号証の一は昭和四四年以前に使用されていた書式であって、その記載も正規のものではない事実が認められる(右認定に反する証拠はない。)ので、別表四の第一係争年度分の1番の取引を証するものではないことが明らかであり、従って同号証と符合する「鈴木材木店」(安田)作成名義の甲第五号証の二、三の記載の信憑性にも疑問があるのであって、少なくともこの点に関する安田供述は真実と認められること、また、安田が原告主張のような横領、売却行為を真実なしたのであれば、課税上の不利益処分もさることながら、元の勤務先への事実の露顕や刑事責任の追及に強い警戒心を抱くのが自然と考えられるところ、前掲甲第一号証及び成立について争いのない乙第七八号証によれば、安田は、「安田雪雄殿と税務署の件に附きましては、此後如何なる事がありましても一切の責任問題は当方にて取らしていただきます。」との正一の昭和五一年一一月一五日付け念書(乙第七八号証)と引き換えに、原告との取引が実在し、その代金支払は現金で決済された旨の昭和五一年一一月一六日付け念書(甲第一号証)を差し入れていることが認められ、安田が対税務署との関係で課税上の不利益処分があり得ることに不安を抱いていたことは窺えるものの、右の点に関して何ら考慮を払った形跡が認められず、このことに、前掲乙第三五号証及び千賀証言を総合すると、原告との取引は存在せず、甲第一号証をはじめとする前掲各書証も、正一に依頼され、単に、原告の対税対策のため、虚偽の内容を記入したにすぎないとの安田供述は、十分に措信できるというべきである。

5  以上、述べてきたところから、被告主張の架空仕入れの事実を認定するのが相当であるが、なお原告は、取引の実在を立証せんとして種々の証拠を提出しているので、これらについて一言することにする。

(一)  原告は、第一に、安田との取引の実在を証するための書証として、甲第三号証(田中国一作成名義の証明書)及び第四号証(合資会社貯木組作成名義の証明書)を提出する。

しかしながら、前掲乙第三五号証によれば、安田は昭和二六年一〇月ころから粂材木店に勤め始め、同所を退職した昭和五〇年四月ころ以前は、番頭として営業活動に重きを置いていた事実が認められるところ、前掲甲第四号証は、右粂材木店と原告との取引を窺わせるものにすぎず、また前掲甲第三号証も、粂材木店に関する記述がないことに鑑みると、果して右記述は安田の勤務先である粂材木店とは区別された安田個人の取引に関するものであると解し得るかには疑問があり、これらの書証をもってしては、前記安田供述を覆すには到底足りないというべきである(なお、原告代表者は、本件各係争年度において、粂材木店との取引がなかったかの如く供述するが、いずれも成立について争いのない乙第七九ないし第八二号証及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第八三号証並びに千賀証言によれば、本件各係争年度にわたって原告と粂材木店との取引が存在した事実が認められるから、右供述は措信できず、前記判断を覆すものではない。)。

(二)  次に原告は、前記各取引により仕入れた材木の売却の事実を証するために甲第三八号証の一ないし八(正一作成の仕入材木の売却対照一覧表)、第三九ないし第五三号証(売却先別帳簿)を提出する。

しかしながら、証人高野正一の証言及び原告代表者尋問の結果によれば、原告は仕入れた材木を他に転売する場合そのままの形で売却することなく、製材、加工してから売却するのが通常であった事実が認められるので、仕入れた原木と変形した製品材とを事後的に対照させ、一覧表を作成することは著しく困難であると考えられる。特に、前掲甲第三八号証の一ないし八には、仕入材の材積と売却材の材積が異なるものが多く認められ、原告代表者は、このことについて、仕入材は最も細いところを基準にして材積を計算すること、仕入材については五ないし一〇パーセントの傷引きをするのが常であること、などを理由に、何ら異常ではない旨説明するのであるが、そうであるならばなおさらのこと、仕入材と売却材とを対応させることは困難である(前掲甲第三九ないし第五三号証と、前記2項で掲げた書証《明細書、納品書、請求書など》とを対比するだけでは不可能に近い。)というべきであるところ、本件全証拠によるもその具体的作成方法、手順については明らかではない(前掲甲第三八号証の一ないし八の作成を正一に対して示唆した証人石田康司も、右の点については知らない旨証言している。)。したがって、これらの書証によっては、前記判断を覆すことはできないと解するのが相当である。

(三)  続けて原告は、本件各係争年度後における安田との取引の存在を立証するため、甲第六三ないし第六六号証の各一ないし三(納品書、請求書、領収証)を提出する。

しかしながら、前掲甲第六二号証によれば、安田は、本件各係争年度における別表四の「架空計上」欄記載の各取引の存在を否定しているものの、「粂材木店」を退職した昭和五〇年四月以降は、原告との取引があったことを認めている事実が認められるから、前掲各書証は、安田供述を覆して前記各取引の実在性を推認させるものとはいえず、かえって、前掲各書証においては、堂々と実名(「安田商店」)を表示していることからすると、右は、本件各取引の実在性に疑問を投げかけるものといわねばならない。

(四)  更に原告は、本件各係争年度前における上原及び安田との取引の存在を示す証拠として甲第六七、六八号証(正一作成の支払手形明細)を提出する。なるほど、右各書証には、「上原清」、「鈴木材木店」の各記載があり、証人石田康司は、右は上原、安田の別称である旨証言するが、その記載様式からみて、右各書証が支払手形の振出の都度、記帳されて作成されたものであることにつき疑問の余地があるうえ、前記(4項)のとおり、少なくとも別表四の第一係争年度の1番に示された「鈴木材木店」からの仕入れは架空である事実が認められるので、同仕入れに関する前掲甲第六八号証の記載は虚偽というべきである。これらの点からすると、右各書証の記載は全体として信憑性に乏しいものというべきである。

(五)  最後に原告は、本件課税処分における差益率(売上高に対する総利益の割合)が不当に高率であることを証するものとして甲第六九号証及び第七〇号証の一、二を提出する。右各書証には、一般木材販売業における標準的差益率に比し、本件課税処分によるそれが相当程度、高くなっている旨の記載が存するが、前記のとおり、原告は、仕入れた原木をそのままの形ではなく、製材、加工してから売却するのを通常としていたのであるから、付加価値が加わって差益率が上昇することは当然に予想されるところであり、前記判断を覆すには足りないというべきである。

(六)  なお、証人石田康司は、本件更正に先立って争われた被告から原告に対する重加算税賦課決定処分に関する被告の異議決定(成立について争いのない甲第五六号証)及び国税不服審判所の審査裁決(同じく甲第五七号証)は、別表四の第一係争年度の7番の取引の実在性を認めているから、本訴における被告の態度は矛盾する旨証言する。しかしながら、右の異議申立ないし審査請求で問題となった主たる争点は、たな卸資産の計上漏れがあるとの前提で、それが故意による隠ぺいか否かにあったから、被告が前記決定ないし裁決の際に右取引の実在を現実に確認したわけでないことは前掲甲第五六、五七号証の記載自体から明らかであり、したがって、右の点は、前記の判断に影響を及ぼすものではない。

6  以上、縷縷述べてきたとおり、上原供述及び安田供述がいずれも信用できるのに対し、これを覆すべき原告提出の甲号各証、証人高野正一、同石田康司の各証言及び原告代表者尋問の結果は、いずれも採用に値しないというべきである。なお付言すれば、そもそも仕入れの架空計上に対する原告の説明(原告の反論1項)は、被告が指摘する(原告の反論に対する被告の認否及び再反論1項)ように、合理性を欠き、他人をして十分に納得させ得るものとはいい難い。この点に関し、証人石田康司は、正一が原告のために立替えた資金の回収に用いる口座と、私的に用いる口座とを区別するために架空名義の口座を開設した旨正一より聞いていると証言するがそもそも、どうして別個の口座を開設する必要があるのか疑問であるうえ(通帳の記帳を見れば、どのような出入りがあったのか把握できるはずである。)、仮に必要があるとしても、別の支店に口座を開設する以上、架空名義で口座を開設する理由を見い出し難く、結局、右証言も前記疑問に対する十分な説明にならないというべきであり、結論として、別表四の「架空計上」欄記載の各取引は、いずれも架空仕入れと認定するのが相当である。

四  雑収入の計上もれ(その一)について

1  被告の主張2項三のうち、A、B、C各預金の発生及びその後の経緯が別表五記載のとおりであることは当事者間に争いがなく、これにいずれも原本の存在及び成立とも争いのない乙第五四、五五号証の各一、二、第五九号証の一、二並びにいずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第三六ないし第三八号証を総合すると、第一係争年度において、A預金の利息として金五万三二〇六円、B預金のそれとして金五〇四八円、C預金のそれとして金二万三七七二円が、名古屋相互銀行柳橋中央市場支店より預金者に各支払われ、その合計が金八万二〇二六円であった事実が認められる(これを覆すに足りる証拠はない。)。

2  また、成立について争いのない乙第四五号証及び弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四四号証によると、原告は、A預金の源となった名古屋相互銀行八熊支店の無記名定期預金三〇〇万円が設定された昭和四四年八月五日の前事業年度(昭和四三年四月一日より昭和四四年三月三一日まで)中に、「梅村建蔵」から合計金二六八万二六九九円の仕入れをなした旨、帳簿に記載しており、内金七一万七八六〇円については、昭和四三年一二月三〇日、原告から「上原清」宛に振出された手形により支払われた旨の処理がなされている事実が認められる。

原告は、右「梅村建蔵」は上原の別称であり、右金額の仕入れは実在していたと主張する(原告の反論2項)が、上原は個人的に原告と取引したことはない旨の供述をなしており、かつ同供述が十分に措信しうることは叙上のとおりであるから、原告は架空仕入れを計上することにより、前記金額に相当する簿外の資金を形成していたと認めざるを得ない。

他方、いずれも成立について争いのない乙第四七号証、第六一号証の一、二、第七六号証の二、いずれも原本の存在及び成立とも争いのない乙第六二ないし第七五号証によれば、被告の主張(原告の反論に対する被告の認否及び再反論2項)するとおり、正一及びその家族(妻よしの、長男照義)の昭和四四年中における申告所得額の合計は、別表七―一記載のとおり金五一二万七〇〇〇円であること、同年中における右三名の預金額は、別表七―二記載のとおり、少なくとも金二〇〇万七〇〇〇円にのぼること、名古屋市内の勤労者世帯の平均的消費支出額を右家族にあてはめると、昭和四四年度において合計金八二万五四八〇円の統計的数値が算出されること、以上の事実が認められ(これを覆すに足りる証拠はない。)、また、当庁昭和五四年(行ウ)第四号所得税更正処分取消請求事件において、原告正一は、同年中に合計金三〇〇万円の貸付けを行なった旨主張していることは当裁判所に顕著であり、したがって、以上の数字を前提とする限り、正一らが前記無記名定期預金を設定する経済的余裕はなかったと推認される(原告は、当時、正一が所有していた刀剣類を豊橋美術こと訴外冨田某に売却して得られた代金約二八〇万円が右預金の原資となっている旨主張するが、これを裏付ける証拠は全く存しない。)。これに、前記預金の設定時期と前記架空仕入れの時期の近接性及び両者の金額の類似性を考慮すると、右預金には、原告の形成した右簿外の資金が充てられたと推認するのが合理的であり、したがって、A預金の預金者は、その実質的出捐をした原告であると認めるのが相当である。

また、B預金は、別表五で示すとおり、昭和四七年六月一七日にA預金と同時に解約、合体されて、金四〇〇万円の預金となっているから、A預金の預金者が原告であると認められる以上、B預金の預金者も同様であると解さねばならない。

さらに、いずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四〇、四一号証によると、右A、B預金の合体した金四〇〇万円の預金と、C預金の変化した金一〇〇万円の預金(いずれも名古屋相互銀行瓦町支店において設定)が同時(昭和四九年七月一六日)に解約されている事実が認められるから、その預金者も同一人であることが推測されること、前掲甲第六七、六八号証によれば、原告はC預金の設定時以前から、架空仕入れの方法により簿外の資金を形成してきたことが窺われること、A、B預金と同様、C預金も仮名(「神谷」)の印影を用いて設定しているところ、いずれも正一個人の預金であるとする原告の主張(ただし、これを裏付ける証拠はない。)では、仮名の印影を用いたことの合理的説明がないこと、などの事情を総合すると、C預金の預金者も原告であると認定するのが相当である。

3  前記のとおり、A、B、C各預金は、いずれも原告が預金者であると認められるので、別表五記載の経緯(当事者間に争いがない。)を経て名古屋相互銀行瓦町支店に設定された金四〇〇万円及び金一〇〇万円の無記名定期預金の預金者も原告と認めるのが相当であるところ、前掲乙第四〇、四一号証及びいずれも弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる乙第四二、四三号証によると、右各預金は第二係争年度である昭和四八年七月一六日に解約され、同時に利息として支払われた金一九万二七二六円及び金四万四八八一円を新たに元金に加えてそれぞれ定期預金とされたこと、さらに第三係争年度である昭和四九年七月一六日にも解約され、利息として金一五万七二二七円が各支払われたこと、以上の事実が認められる(これを覆すに足りる証拠はない。)から、右各利息も当該年度における原告の雑収入と見なされるべきことは当然である。

五  雑収入の計上もれ(その二)について

1  いずれも弁論の全趣旨により原本の存在及び成立とも認められる乙第三二、三三号証、第三九号証によると、

(一)  本件各係争年度以前より名古屋相互銀行川原通支店に「太田勝次」名義の普通預金口座が存在し、同口座には、

(1) 昭和四六年一一月三〇日 金二万円

(2) 同日 金六三万九一六四円

(3) 昭和四七年一一月三〇日 金七七万九〇〇〇円

(4) 昭和四八年二月二八日 金七三万二〇五一円

(5) 同年三月三〇日 金五八万五六六〇円

(6) 同年六月一日 金五八万八四四二円

(7) 同月三〇日 金三四万六一七四円

(8) 同年七月三〇日 金九六万七六七九円

(9) 同年八月三〇日 金六四万七一八〇円

(10) 同年九月二九日 金四四万二五九〇円

(11) 昭和四九年一一月一一日 金二五万一六〇〇円

(12) 同日 金二四万二八九〇円

の各入金があったが、口座開設のための入金とみられる(1)を除いては、すべて「材照商店」振出にかかる約束手形の手形金が入金されたものである。

(二)  右預金の利息として、第一係争年度中である昭和四七年九月一四日に金六〇九一円、昭和四八年三月一六日に金八三八一円、以上合計金一万四四七二円、第二係争年度中である同年九月一〇日に金一万四六七二円、昭和四九年三月一一日に金一万一七五三円、以上合計金二万六四二五円、第三係争年度中である同年九月一七日に金一万三四三一円、昭和五〇年三月一〇日に金一万六五六九円、以上合計金三万円が各支払われている。

(三)  第一係争年度である昭和四八年三月二三日に、大和銀行中村支店において「桂川秋次」名義の普通預金口座が開設され、同口座には、

(1) 昭和四八年三月二三日 金一万円

(2) 同月三一日 金一三四万四二六〇円

(3) 同年五月三一日 金一〇〇万円

(4) 同年七月三〇日 金一一九万九三二〇円

(5) 昭和四九年三月二九日 金二三二万六一六〇円

の各入金があったが、口座開設のための入金である(1)を除いては、すべて「材照商店」振出にかかる約束手形の手形金が入金されたものである。

(四)  右預金の利息として、第二係争年度中である昭和四八年九月一六日に金一万四七九四円、昭和四九年三月一八日に金二万八六七五円、以上合計四万三四六九円、第三係争年度中である同年九月二四日に金六万三三九八円、昭和五〇年三月一七日に金六万〇六一一円、以上合計金一二万四〇〇九円が各支払われている。

(五)  昭和四六年一二月二八日に、名古屋相互銀行黒川支店において「山中浩司」名義の普通預金口座が開設され、同口座には、

(1) 昭和四六年一二月二八日 金二万円

(2) 同月三〇日 金六二万円

(3) 昭和四七年一月二九日 金一八万円

(4) 同年五月三一日 金三九万円

の各入金があったが、口座開設のための入金である(1)を除いては、すべて「材照商店」振出にかかる約束手形の手形金が入金されたものである。

(六)  右預金の利息として、第一係争年度中である昭和四七年九月一四日に金九五一八円、昭和四八年三月一六日に金一万〇三四一円、以上合計金一万九八五九円、第二係争年度中である同年九月一〇日に金一万一四三〇円、昭和四九年三月一一日に金一万三七二三円、以上合計金二万五一五三円、第三係争年度中である同年九月一七日に金一万六六六六円、昭和五〇年三月一〇日に金一万五四七〇円、以上合計金三万二一三六円が各支払われている。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

2  また、別表四の「架空計上」欄記載の各取引は、前記のとおり、架空仕入れと認定されるところ、右事実に、前掲乙第一ないし第一〇号証の各一、二、第一六、一七号証の各一、二、第二五、二六号証の各一、二を総合すると、

(一)  前項一(5)の入金は別表四の第一係争年度分の1番の取引に、同一(7)の入金は同3番の取引に、同一(8)の入金は同4、5番の取引に、同一(9)の入金は同7番の取引に、同一(10)の入金は同第二係争年度分の(A)2番の取引に、同一(11)の入金は同第三係争年度分の8番の取引に、同一(12)の入金は同7番の取引にそれぞれ対応し、同取引の代金支払の形式をとって原告が提出した約束手形が決済されたものである。

(二)  前項三(2)の入金は、別表四の第一係争年度分の2番の取引に、同三(3)、(4)の入金は同6番の取引に、同三(5)の入金は同第二係争年度分の9ないし11番の取引にそれぞれ対応し、前同様、原告振出の約束手形が決済されたものである。

以上の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。そうすると、前記「太田勝次」及び「桂川秋次」名義の普通預金は、その多くが、架空仕入れによって形成された原告の簿外資金を原資としていることが明らかであり、その他の入金についてはその経緯が詳らかではないものの、原告が同預金をいずれも正一個人のものである旨主張しながらこれを裏付ける具体的証拠を提出しないことに照らすと、右同様、原告の形成した簿外資金が流入したものと推認され、結局、全体として右預金の預金者は原告であることが認定できるから、そこから生じた利息(前項二、四)は、すべて原告の雑収入として取り扱うのが相当である。

のみならず、第一係争年度中に入金された前項三(1)の金一万円も、その具体的形成過程は明らかではない(少なくとも、別表四の第一係争年度分の架空取引により形成された簿外資金と無関係であることは、前記のとおり、右資金のすべてが振出手形の決済の形をとって、「太田勝次」ないし「桂川秋次」名義の預金口座へ入金されていることから明らかである。)ものの、原告が預金者であると認められる「桂川秋次」名義の預金口座へ入金されている以上、原告の雑収入と認定されるのはやむを得ないところである。

3  さらに成立について争いのない甲第六二号証によれば、「山中浩司」なる人物は、預金通帳などに記載された住所に居住していなかった事実が認められるのに対し、原告は、前記「太田勝次」、「桂川秋次」と同様、単に右は正一の別称であると主張するのみで、仮名を使うことの合理的説明をなさず、かつ右主張を裏付ける具体的証拠を提出しないことに鑑みると、一項五記載の各入金は、第一係争年度前に原告が形成した簿外の資金(前記のとおり、前掲甲第六七、六八号証の記載からも、かかる操作の存在が窺われる。)が流入したものであって、その預金者は原告であると認めるのが相当であり、したがって、これにより生じた利息(1項六)も、原告の雑収入と認むべきは当然である。

六  期首たな卸資産の減額について

原告提出の第二係争年度分の申告書に、被告主張(被告の主張2項五)の期首たな卸資産が計上されていることは当事者間に争いがなく、これが架空仕入れ(別表四の第一係争年度分の67番)であることは叙上のとおりであるから、金九八万六五一〇円については、売上原価たることを否認すべきことは言うまでもない。

七  申告額から減算すべき項目について

1  被告の主張3項二、四、五の事実はいずれも当事者間に争いがない。

2  原告提出の第一係争年度分の申告書に被告主張(被告の主張3項一)の期末たな卸資産が計上されていることは当事者間に争いがなく、これが架空仕入れとして否認すべきことは、前同様である。

3  以上を総合すると、原告の第一係争年度における所得金額は、次項のとおり、金一一五七万三九六〇円であると認められるところ、地方税法(昭和四九年三月三〇日法一九号改正前のもの。)七二条の二二第一項二号を適用した事業税額は金一二五万三七六〇円であるから、申告にかかる事業税額(当事者間に争いがない。)を控除した差額金七九万七一六〇円を損金として、第二係争年度分の所得金額より減算すべきことになる。

また、第二係争年度における所得金額も、次項のとおり金一六五八万六〇七七円と認められるところ、右と同様の処理をすると(但し、地方税法については右改正後のもの)、第三係争年度分の所得金額より差額金七五万一八〇〇円を損金として減算すべきことになる。

八  所得金額について

以上、一ないし七を一覧表にまとめると、別表六のとおりであり、その認定所得金額は、本件課税処分におけるそれと比較すると、第一、二係争年度分はいずれも一致し、第三係争年度分は、右認定所得金額が本件課税処分におけるそれを上廻る結果となることが計数上、明らかである。

九  結論

以上の次第で、被告の本件課税処分は適法であり、原告の本訴請求はいずれも理由がないのでこれらを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 高橋利文 裁判官 加藤幸雄 裁判長裁判官加藤義則は、転任のため署名捺印できない。裁判官 高橋利文)

別表一

第一係争年度分

<省略>

別表二

第二係争年度分

<省略>

別表三

第三係争年度分

<省略>

別表四

架空仕入金額の明細表

<省略>

仕入計上もれは上原富太郎の仲介によるもの

別表五

無記名定期預金の発生及びその経過

(名古屋相互銀行)

<省略>

別表六

<省略>

別表七-一

高野正一及び家族の収入金額

(昭和44年)

<省略>

別表七-二

高野正一及び家族の預金の状況

(昭和44年)

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例